ビフォー・アライビング・アット・ザ・ターミナル 感想

ビフォアラが大好きでして、長文オタク語りしたくなったので書きます。

 

「ビフォー・アライビング・アット・ザ・ターミナル」は、人工クラゲさんの作品です。

ある街を舞台に、主人公が幼い頃体験してきた心霊話を回想していきます。ホラーノベルと銘打ってますが、びっくりというよりは意味が分かるとゾッとする系、そんな路線でした。

回想を繰り返すうちに、徐々に隠された真実が…といったお話です。中盤くらいまでは怖いお話集として楽しめ、後半、特に終盤になるとぼくの大好きな展開だったので、わりと思い返してはぺらぺらページを捲ったりしてます。

 

この辺からネタバレ

 

 

 

 

 

まず触れたいのがPrhyzmicaさんの音楽なんですが、本編のBGM、挿入歌、ED曲の全てがPrhyzmicaさんの音楽です。これがビフォアラの雰囲気と異様にマッチしていて、書き下ろしたのか?と疑うほど。

ボーカルの歌詞もまるで本編で、「スペクタキュラー」「ユビサキ」は魚住さんの心理描写だと思ってるし、わりと最近気づいたのが、「ルル」はシュウに対する根津先輩の気持ちになってるんだよね。

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根津先輩の出番は少なめで、推測が多めになりますが…

先輩はわりとシュウくんに好意を寄せてたと思います。”彼女”が先輩から相談を受けていたらしき1文もあるし、このシーンでも「今」はっきり好きだと言ってます。

でも、あくまでシュウくんの目的はオカルトで、先輩に近づいたのは手段でしかなかったんじゃないかなーと思います。終盤、「なんとかいう先輩」とか言われてたのは流石に不憫で泣いた。

そんな一方通行な根津先輩の想いを綴ったのが、この「ルル」って曲だと(勝手に)思ってます。聴いてるとなかなか切なくなります。

 

歌詞の偶然の一致については製作者の山科さんも最近ブログで語っていらして、ほんとうに同じことを思ってたので謎に興奮しました(?

 https://jnc-klg.hatenablog.com/entry/2020/03/07/181027

 

彼女の遺言が録音されたカセットテープが流れるシーン。ここが狂おしいほど好き。

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死ぬ間際に、「そんなの残しても意味があるなんて思えない」と一蹴してしまうのか…とひっくり返りました。

ここで未練なんて零してしまえば、主人公とシュウくんの心に刺さったまま抜けなくなると思うし、それは今, これからを生きる者にとっては呪いでしかないのかなーとも思う。

ナルキッソスのエピローグで、セツミのお母さんが「たまに思い出すくらいで丁度良いのかもしれない…」と零す場面がありますが、それに近い雰囲気を感じました。

あえてこれからへの言葉を残さず、これまでの思い出を語った彼女の遺言は、見送る者にとってはこれ以上ないエールかもしれないですね。

 

そんな彼女の想いも、忘れてしまっては何も残らないと思います。

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忘れたい記憶なんて生きていれば山ほど積もってきますし、忘れるのも1つの選択だと思います。「雨の日」の片岡教授や、当時はそのやり方に疑問をもっていた魚住さんも記憶を上書きしようとしてましたね。

でもねーこねこソフトのオタクとしては、積み重ねを否定することはしたくないし、楽しかったことも、忘れたいことも、全てひっくるめて今の現実があるわけなので、それをやり直したり、修正するのはあまり好きじゃないです。

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彼女を忘れることは、もう一度彼女を殺してるようなもんにも思えます。というか、彼女の存在自体を消してしまうのでもっと酷いかも。

彼が覚えてる限り、彼女は、彼女の思い出は彼の中で生き続けるという解釈。「ルリのかさね」で言う「習ね」の考え。

「If we should meet again」も相まって、前向きな印象を受けるEPが良かったですね。手をふる少女、あえて誰かは語るまいって感じですが、そんなのも印象深い終わり方でした。読後感は非常に爽やか。

 

まとめると、やっぱり一番覚えてるのはラストのシーンで、これは定期的に読み返すくらいに好きです。筑波を舞台にした作品の雰囲気、Prhyzmicaさんの音楽もとても良かった。

筑波の近くで育った身としては、あの街に対して持っていた特殊な感情も好きになった理由かなぁと思ったりします。物心つく前からあの辺には行ってた記憶があるし、学園都市らへんの近未来的な町並みは、憧れのようなものがあったと思う。

そんな自身の体験もあって、印象に残った作品であります。家から近いし、いつか聖地巡礼したいなーとも思ってます。